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チューリップ畑の真ん中で白狐が踊っているよ [日記]

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「祭り」といっても、ここでの主役は神輿でも屋台でもなく花だった。
視界の端まで続くチューリップ畑。これがこの祭りのメイン。
大人も子供も老人も、思い思いの速度で歩き、祭りを楽しんでいる。開花を祝う祭りならではの、人混みのない、穏やかな光景だった。

花畑には羽村堰から取水したと思われる水路が中央に一本流れている。この水は畑に潤沢に行き渡っているようで、畑はどこを歩いていても靴が沈む。それほど土が水を含んでいて柔らかいのだ。
ふと辺りを見回して、どの畑も正方形のかたちをしていることに気付く。

『ここは水田だった場所なんだ』

私は後ろを振り返った。そこには青々とした稲の苗が、視界いっぱいに広がっているはずだった。苗の上を風が渡っていく姿も見えるずだった。
今、その場所にあるのは一面のチューリップ畑だった。赤、白、黄色だけじゃない。鮮やかな流行の口紅を思わせる桃色のものや、芍薬を真似してパニエをこんもり詰めたドレスのような豊かな花弁を振りまいているものもあった。
たくさんのチューリップが、どこまでも続いて、頭を並べて揺れている。

花畑を歩いていると、どこからか軽やかな笛の音が聞こえてきた。
畑の中央でお囃子をやっているのだ。すぐ側に「○○囃子保存会」という幟旗(のぼりばた)が見えた。狭い畦道をいっぱいに使って白狐と人間らしき人が舞いながらなにかやりあっている。
教科書のなかでしか見たことのない風景だった。
そう、私が知っていたのは、青い苗が揺れる田園の真ん中に笛の音が響く絵だったけど。それは稲が無事に育つことを祈るための舞だった。
白狐は畦道の上を、右に左に跳び上がる。
チューリップ畑の真ん中を、白狐が踊っているのだ。

お囃子の音も、白狐の舞も、きっとその当時から変わらない。
でも、そこにかつてあった青田の風景は背景にない。
しかし案ずるなかれ。ただ、その目的が、豊作を願うことではなくて、開花を喜ぶことに替わっただけのことだ。



■羽村市|はむら花と水のまつり
http://www.city.hamura.tokyo.jp/0000000957.html


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