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CINEMA AMIGOで「鬼に訊け」を観てきた。 [レポート]

逗子のCINEMA AMIGOで山崎佑次監督の「鬼に訊け」を観てきた。
「鬼に訊け」は法隆寺の昭和の大修理に関わった宮大工・西岡常一のドキュメンタリー映画。
タイトルに反して、「鬼」と呼ばれたその職人の顔だけ見ると、どこにでもいそうな普通のおじいちゃんだった。しかし、その口からさらりさらりと出てくる言葉は常人ではできないことばかりだ。

「まずは過去の文献を読むところから始めました。飛鳥時代の頃は…」
「現状建っているものを図面に落とし込んだ。実測調査に2年かかった」
「木の癖を知っていなきゃいけない。台湾ならこちらから風が吹いてくるけど、木はまっすぐ生えようとするからここにうねりができる。それが木の癖になる」
(注・記憶で書いてますので、ちょっと内容が本編と違っている部分があると思います)

「命を捧げる仕事」というのはこういうことを言うのだ、と思う。
西岡常一は宮大工の家系に生まれて、祖父からの英才教育を受けて育った。そして、第二次世界大戦を挟んで行われた法隆寺の昭和の大修理に関わった。
出征するときは法隆寺で「私が必要であれば、生かしてください」とお願いしてから行って、帰ってきたら家よりもまず法隆寺に行ったという。

西岡常一の生き方ももちろんだが、木造建築であることにこだわる宮大工の世界も興味をそそる。
宮大工の世界ではまず「木」ありきなのだそうだ。
木の癖を知り、木に合わせて道具を作り、最後に大工の腕が関わってくる。
これだけ聞いても気が遠くなりそうな世界だ。
自分の腕を磨いて一人前に仕事するなんて、できて当たり前なのだ。
「工数の関係で、電気カンナも使いますが、あれは木をちぎっているようなもんですわ。断面が荒くて、そこから朽ちてしまう。最後は槍カンナで仕上げます」

西岡常一は繰り返し、「木は神様です」と言う。
その木を最大限生かすことで、1000年生きる建築が生まれる。
法隆寺は耐震・耐火のためにコンクリートを入れた。「でも、コンクリートはもって100年でしょう。」
朽ちたように見える木でも、何分か削ると真新しい檜の香りがする。
瓦を下すと、沈下していた柱も少し浮き上がってくる元気がある。
でも、それはその木の実力を知っているから言えること。
木の力を知らなかったら、ただ朽ちさせてしまうだけだ。

こんな宮大工の「鬼」西岡常一だが、法隆寺に鉄骨を入れるかどうかで他の専門家と対立し、棟梁の座を辞している。
その後、薬師寺の伽藍再建で声がかかる。そのとき、現場に行くまでの車の中で、心は揺れ動いていたという。
「もう一度、ここから生まれ変わらなければだめだ」
その時、そう決心したそうだ。
西岡常一、62歳のときだ。


――誰も立ったことのない場所にひとり立たなければならなくなったとき、人生をただひとつのことに捧げようと心に決めたとき、観てほしい映画だと思う。
きっと、力をもらえるはずだから。



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  • 出版社/メーカー: マクザム
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それと、この映画を観たCINEMA AMIGOについてもちょっとだけ。
カフェ形式で楽しめる逗子の映画館。
1,500円で映画+1dirink。
椅子や家具も、映画館の銀幕と釣り合っていて素敵。
お食事楽しみながら映画を観れるのもいいです。
映画のセレクトも粒ぞろいで、予告編で流してた映画全部観たくなってしまった。
いい映画館でした!

■CINEMA AMIGO
http://cinema-amigo.com/

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